片山 寛 先生 礼拝メッセージ    2018年3月25日(日) =シュロの主日=



「ラザロ、出て来なさい」

聖 書: ヨハネによる福音書11章32〜44節
お話し: 片山 寛 師(かたやま ひろし=西南学院大学神学部教授)
時 間:約45分


 今週は受難週、イエス・キリストの十字架とご復活を心に覚える週であります。そこで今朝は、その出来事の予兆、先取りとされる「ラザロの復活」の出来事を心に覚えたいと思います。ラザロは死んで四日もたっていたのに、甦って墓から出てきた。にわかには信じがたいことですが、そのような不思議な出来事が聖書には語られております。

 ラザロが甦るということは、彼一人にとってのみならず、その妹たち、マルタとマリアにとっても、死んでいたのに甦るような出来事でした。それは文字通り「起死回生」の出来事だったのです。

 というのは、古代ユダヤは厳格な父系社会でしたから、この兄妹の中で唯一の男性であるラザロが死んでしまったということは、その妹たちも財産のすべてを失うことを意味していたからです。女性には財産の相続権がなかったのです。

 今はまだ、お葬式の直後ですからいいとしても、そのうちに遅かれ早かれ親族会議が開かれます。そして遠縁・近縁いずれかの親族の男性が誰かこの家に入ってきて、後継ぎになります。その人がどういう人間であるかによって、マルタとマリアの運命はこれからどうなるかわからなかった。

 「ラザロ、出て来なさい」、その言葉はラザロに対してのみならず、マルタとマリアに対しても語られています。「出て来なさい、マルタとマリア、その墓の中から、悲しみと絶望の中から、この世界の様々な苦しみの中から、神さまの光の中へと」。

 「ラザロ、出て来なさい」、その言葉は私たちに対しても語られています。あなたの無力の中から出て、光の中を歩みなさい。

 「あなたがたには世で苦難がある。しかし、勇気を出しなさい。わたしは既に世に勝っている」(ヨハネ16:33)。